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MVNOが切り開く新たな可能性

いつか来た道

携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題である。高市総務大臣には、その方策等についてしっかり検討を進めてもらいたい
安倍晋三首相が2015年9月の経済財政諮問会議でこう言明したことは、携帯電話業界に大変なインパクトを与えました。時の首相が、オフィシャルに「日本の携帯代は高すぎるから、料金を下げる必要がある」と認めたのです。既存キャリア3社が衝撃を受けただけでなく、国内全体に「いま起ころうとしている地殻変動」を改めて突き付けた、といったら言い過ぎでしょうか。

今、携帯電話業界に何が起きているのか。
そこでは、今まさに巨大既存3キャリア(docomo、au、Softbank)と新興のMVNO(格安スマホ事業者)の激しい攻防戦が繰り広げられているのです。

MVNO(Mobile Virtual Network Operator)とは、キャリア3社が保有する通信ネットワーク回線を借り受け、データ・音声通信事業を営む事業者の総称です。ユーザーから見たMVNO事業者の魅力は、何と言っても価格。キャリアの高額な料金設定をしり目に、インパクトある価格設定でボリュームゾーンである若者を中心に切替を図るビジネススタイルから、MVNOは「格安スマホ事業者」等とも呼ばれています。

しかし、MVNO事業者の普及はまだ道半ば。
総務省報道※によると、2014年12月末時点でのMVNO契約数(SIMカード型)はわずかに195万回線。同時期のdocomo社契約者数は6500万人(同社HPより)ですから、いかにMVNOが高い壁にチャレンジしているかが見て取れます。

※出典:総務省 MVNOサービスの利用動向等に関するデータの公表(平成26年12月末時点)

「3大キャリアが完全に牛耳っている中、MVNOが国内のスマホ市場の主導権を握るとはとても思えない」

現在の浸透状況を見てそう評する方が多いのも事実ですが、一方で「何か大きな動きが起きている」と胸騒ぎを感じる方が増えているのも確かです。
なぜ胸騒ぎを覚えるのか。それは、MVNOがたどってきた成長過程が、私たちが「いつか見たことがあるプロセス」だからです。「いつか見たプロセス」の一つは、他でもない携帯市場での「スマホがガラケーを駆逐した実績」にあります。

情報端末として携帯電話とは一線を画したスマートフォンは、通話機能ではなく高度なデータ処理機能と直感的な操作方法とをセールスポイントとして爆発的な人気を呼びました。

確かにスマートフォンは発売当初から人気を呼びましたが、しかしここまで普及するとの予測は当初ほとんどありませんでした
それが、ふたを開けてみれば平成22年末で普及率7.2%の状況から、わずか5年で64.2%まで驚異的なスピードで拡大し、私たちの生活の隅々まで普及をとげ、いまや利用状況として若年層を中心にWebにアクセスする主要デジタルツールに躍り出るまでに至っています。(平成26年度 総務省 通信利用度調査より)

これほどのスピードで携帯電話媒体の主役が入れ替わったのも、私たちが情報端末としてのスマホに強い期待感を持っているためと言えるでしょう。

もう一つの「いつか見たプロセス」は、携帯電話以外の巨大産業のたどった道筋の事を指します。鉄道、固定電話、郵政、そして電力。いずれも巨大インフラ事業は国営から民間に事業の担い手を移したり、また特定の企業が独占的に有する巨大な事業用設備の利用権を、多数の事業者に開放し競争を促すような流れをたどっているのです。

このような「既視感」を携帯電話事業にあてはめたとき、「既存キャリア3社の独占状態を脱し、MVNOが強力かつ魅力的な選択肢のひとつとして国民に支持される」ことが強く期待される状況にあるのです。

「MVNO戦国時代」の先に

もっとも、「MVNOが急速に普及期に入るだろう」との見方は事業者側も強く認識しており、いま空前のMVNO事業者参入ラッシュが続いています。

主だったところでは、2015年初頭よりイオン社がイオンモバイルを発表し、MVNO事業に参画を表明致しました。また、ECモールの雄 楽天も、サッカー選手を起用したCMがインパクトのある「楽天モバイル」をひっさげてやはりMVNO事業へのアプローチを開始しています。
この他、近年では「Y!mobile(ワイモバイル)」や「LINE」、「mineo(マイネオ)」なども盛り上がりを見せてきています。
こうしたビッグネーム以外にもMVNO事業者参入の報は後を絶たず、今後数年間は多様なサービスによる激しい顧客争奪戦が繰り広げられることが予想されます。
しかし、多数のMVNO事業者が参入し、活況を呈しているように表面上見えたとしても、「条件が整わなければ」MVNOの普及率は低調なまま推移するでしょう。

MVNOが普及率を引き上げる「条件」とは、「ユーザーの信頼を勝ち得ること」に尽きます。
いまMVNOを利用しているのは、本当にごく一部の「携帯電話に詳しい、ネットリテラシーの高い層」もしくは、法人携帯として必要な部門に割り当てられているにすぎません。ボリュームゾーンである一般のユーザーをいかにMVNOに呼び込むか。そのためにはMVNO事業そのものの信頼性を大きく高める必要があります。

現に、前掲の総務省報道によると、MVNOを利用しないユーザーへ「なぜ利用しないのか」をアンケートで確認したところ、「MVNO事業をよく知らないから」と答えたユーザーが51.3%にのぼっており、「得体のしれない、品質も良くわからない事業だ」として認知も進んでいない状況にあることが伺えます。

認知の一貫としてプロモーションしかり、通信速度、通話料、データ量を示した料金プランなど、各社工夫をしています。
料金以外のメリットとして、「ポイント」や「マイル」がたまることを訴求している事業者もあるので、多様化するニーズに合わせて各社訴求しています。

MVNO事業者間の切磋琢磨によりサービスがこなれてきて、「どのMVNO事業者が有利か」がハッキリしてくると、そもそも簡便に事業者を切り替えられるのがメリットのサービスの為、MVNO事業者の中で勝ち負けが鮮明になってくると思われます。
そして、既存キャリアとMVNO事業者の戦いは、対戦相手が明確になった段階でいよいよ本格化していくのです。

賢いユーザーの選択とは

そんなMVNOをめぐる様々な展開を前に、私たち個人・法人ユーザーはどのような選択を取るべきでしょうか?
ユーザーの置かれた状況や嗜好は様々であり、一概には決めつけられませんが、あえて申し上げるなら
「MVNOに一度はトライしてみよう!」という一言です。

MVNO事業者のラインナップも出そろい、現状、通話品質等も大幅に改善されている傾向にありますし、3大キャリアのサービスと比較しても、遜色のないサービスが出始め、ユーザによってはキャリアでは満たされなかったベネフィットが得られる状況にあるからです。
また、今後MVNO事業が拡大する前にいち早くトライすることで、ノウハウや知見を得ることができ、モバイルツールの選択の幅を広げる意味でメリットがあると思われます。この機会にMVNOの新しい可能性にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。

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