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鉄道とセカンドライフ

昔々、電車がまだ汽車だったころ。
初めて線路が敷かれることになる地方都市では、「新しい交通が開ける!」と喜ぶ人ばかりではなく、
「あんな煙ばっかり吐くお化けみたいな乗り物、誰が使うものか」とまゆをひそめる人も多かったようです。

そんな批判派が多かった地域では、町の中心地から離れた所に駅を設置し、線路を遠ざけようとしたケースもありました。
結果、その後の鉄道の発展により、積極的に鉄道を取り入れた町に資源も人も集中し、鉄道を嫌った町が取り残されていった…。地方都市にはありがちな話です。

だから、「新しいもの」「斬新なコミュニケーション」につながるものはどんどん取り入れるべき、早くしないと時流に取り残されてしまう!これはそんな事例かもしれません。

では、こんな事例はどうでしょう。
「セカンドライフ」という仮想空間をおぼえていらっしゃいますか?

セカンドライフは、自分の分身(アバター)をリアルな環境に住まわせ、生活させる電脳仮想空間として10年前に大流行しました。日本でも金融機関等がセカンドライフ内に支店を開設する等して騒ぎになり、「いよいよこれからサイバー空間での生活が始まるのか!」とわくわくするような気持を持たれた方も多かったのではないでしょうか。

しかし、その後のスマートデバイスの隆盛(セカンドライフはpc環境ベースでした)と、それにともなうSNSブームによりセカンドライフは大打撃を受けます。結局、日経新聞などでも「誰にも会わない」「廃墟」と記事※にされる程の空虚な空間となってしまいました。

「新しいこと」「斬新なコミュニケーション」に早々に飛びついて、結局うまく行かなかった事例とも言えるでしょう。

※出典 2014年2月10日 日経サプリ 「廃虚」のセカンドライフ 仮想通貨に潜む危うさ

二つの事例から言えることは、
「新しい事が全ていいとは限らない、よく検討してから導入を決めよう」等という当たり前の結論だけではありません。

新しい技術や文化の導入には「外部要因」が何より重要であるということです。
その技術がどれだけ優れているか、斬新かを見極めると同時に、「周囲に環境に適しているか」「環境の変化について行けるか」という外部要因による影響を見定める必要がある、と言えるかもしれません。

セカンドライフのサービスそのものは問題なかった。アバター文化もその後のSNSブームの中にも継承され、日本でも大変なブームとなったように、方向性は間違えていなかったのです。
でも、飽きられた。「外部要因」であるスマートデバイスの、目を奪うような革新性の前にはかすんでしまったのです。

私たちのビジネスにおいても同様です。
新しいビジネスツールが投入されたとき、ツールそのものの革新性や有用性のほかに、外部要因や環境との親和性を十分に見定める必要があります。

そこで、本稿ではマーケティングにおける新しいツールである「Marketing Automation」のメリット/デメリットを見ていくことで、国内での導入是非について検討していきたいと思います。

マーケティングオートメーション(Marketing Automation)とは

マーケティングオートメーション(MA)は、ヒトとマシンがマーケティングで業務を配分し、業務の効率化と細かいデータの情報収集を行う手法を言います。
企業のマーケティングのプロセス段取りをヒトが行い、ネット上の見込み客(リード)の行動に対して細かくフォローの対応を仕込んでおく機能(『資料請求を行う』ボタンを押して、やっぱりやめたユーザーにフォローメールを発信する 等)が搭載されています。実際のメール配信は設定しておくことでシステムが自動発信してくれます。つまり、マーケティングの実行部分のオートメーション化といえます。

同様に、顧客の行動を分析し、「ホットな顧客」の行動をパターン化して無数の潜在顧客にあてはめ、「このお客さんはもう購買しそうですからアプローチしましょう!」とセールスパーソンに連携する機能も大変有効です。

そのためにスコアリングという、見込顧客の行動に合わせたスコアの積み上げシナリオを作り、精度を上げていくことが重要とされています。

昨今、日本企業の間でも自社サイトのコンテンツを充実化させ、マーケティングオートメーションの導入・運用が相次ぎ、サービス提供事業者も増えてきています。まさに「新しい」「斬新なコミュニケーションツール」と言えるでしょう。

このマーケティングオードメーションのメリットとは、マーケティング担当セクションが「人間がやるべきこと」に取り組める部分にあります。
メールの配信をセッティングするのがマーケの仕事ではありませんし、ホットリードを集約するのが仕事でもありません。
そもそも、マーケティング担当者は多忙です。営業部門や媒体側とのこまめな交渉や、営業担当者・編成との調整、同時並行で走る多数のプロモーションの統括や管理。いまではアフィリエイター(含む個人)との交渉までが業務範囲に入ることも多く、「細かな調整が仕事の大半」となっているケースも多いでしょう。

こういった中で、マーケティング担当者はあくまで「仕掛けを考える」ことにこそ時間を使うべきなのです。仕掛けを考え出すことは、他の誰にもできないのですから。調整は他の誰か、つまりマシンに任せればいい。

その意味ではマーケティングオートメーションは優れたツールとして大変に効果的なツールと言えるでしょう。なにより、「外部環境の変化」に適切に対応するためのツールであり、フレキシブルに状況変化に対応できるのは大きなメリットといえます。

ではデメリットはどうでしょうか。
運営に手数がかかるところが難点と言えます。
マーケティング側で仕組にこだわり、細かな調整を入れていけばいくほど事前の仕組づくりに手がかかりますし、逆にそこで手を抜いてしまうと、例えば営業担当者に回される見込み顧客データが「甘く」なってしまったり、ユーザーへのアクティブなアプローチやフォローが出来なくなる可能性もあります。
この場合、次第にマーケティングオートメーションが機能しなくなり、せっかくセールスを支援できるシステムを導入しているにもかかわらず、「お飾り」になってしまうケースもありえます。
導入したことで安心・満足できるツールではない、ということでしょう。

焦らず地道に積み上げる

マーケティングオートメーションそのものが理にかなった優れたツールであることは論を待たないでしょう。
課題は導入後のフォローをいかにしていくかですが、大事なのは「どんなに優れたツールでも、使いこなすのは人間である」という部分に尽きるかと思います。

リード情報をいかに蓄積するか。そしてその情報をもとにどのようにして商談に生かすのかなど、
導入後、少しづつ自社のマーケットに「慣らしていく」ように、地道に取り組んでいくことで、マーケティングオートメーションはきっとその効果を発揮する事でしょう。


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